今回の小説は原作の隙間の話で、タイトル上と最後の方は17話、間は14話位です。

「ねえねえロゼちゃん。こんなのはどう?」
その日ロゼ達は、台無しにされた服の代わりを買いに来ていた。
「どうしてそれなの?エレナさん」
ロゼはエレナの持ってる服を見ると、小首を傾げる。
エレナが見せたのは、薄い緑色の上着と、緑色の短いスカートだった。
「ロゼちゃんって、あまり短いスカート穿かないでしょ?」
エレナはからかう様に笑うと、ロゼの耳元に唇を寄せる。
「ルイもドキッとするんじゃない?」
ロゼはエレナの言葉の意味を理解すると、真っ赤になった。
「ほらほら、とりあえず、着て来なさい」
自分の背中を押すエレナを、ロゼは慌てて振り返る。
「着るけど、少し待って!」
「どうしたの?」
エレナが立ち止まると、ロゼはエレナの掌に何かを置いた。
「失くしたら困るから、エレナさんが預かってて。それじゃあ行って来るね」
エレナは駆けて行くロゼの後姿を、ぼんやりした様子で見送る。
そしてその後手の上の小さな布袋を見ながら、少し切なげに、だけど嬉しそうに微笑んだ。

I'll see you in my dreams.

「エレナさんは、本当に好きな人と結ばれてね?」
「役目が終わるその時まで、守りきって見せるけどな」
それは、ロゼとルイが結ばれないと知った時。
「お前達には、何時も笑っていて欲しい」
それは、ライオネルの未来を知った時。
3人が言葉と共に浮かべた笑顔には、小さな諦めと、大きな覚悟と、微かな悲しみが宿っていた。

少し前までは、他に優先すべき事があった。
だから考えないでいられた。
だけど今はもう、考える余裕が出来てしまっている。
気にし過ぎてしまう事は、相手も望んでいないと判っている。
だけど、何かがしたいと思った。
あの3人の為に、ほんの少しでも、何かがしたかった。
それが只の自分勝手な自己満足でも、このままでは、直ぐにはあの3人の事を、何でもでもない様には見られない。
だから、探している。
一緒に居られる今だけじゃなく、離れてしまっても出来る事を。

何時までも沈み込んでいるなんて、自分らしくない。
だからと言って、このまま部屋に居ても、気が滅入るだけだ。
だったら町に出てみよう。
何かが見付かるかもしれないと言う期待と共に、エレナは1人町へと行った。

「恋愛成就、邪気退散、様々な効果のパワーストーンは如何ですか?」
幾つもの客寄せの言葉の1つが、何故かとても惹かれ、店へと入って行った。

「いらっしゃいませ」
「表で言っていた他は、どんな効果の物があるの?」
「これを見て下さい」
店主はエレナに何かの紙を渡す。
「それが此処で扱っている物の効果全部です」
エレナは紙の上から下まで視線を滑らすと、店主に紙を返し、注文を口にする。
買ったのは、ロゼにラァーバ、ルイにモスアゲート、ライオネルにユナカイト、自分にチャロアイトだった。

「そういえば、あれも必要ね」
帰る途中に花屋を見付け、財布を確認する。
「まだ大丈夫そうね」
花屋で買ったのは、ニゲラとラベンダーだった。

「あたしが呼ぶまで、部屋に1人にして」
エレナは帰るなりそう言うと、部屋に入って行った。

ニゲラとラベンダーから絞った汁を入れたコップにパワーストーンを入れ、魔方陣の中心に置く。
部屋の電気を消し、杖を構えて精神集中し、呪文を唱えると、部屋中を照らすほど光った。
光が消えたらコップからパワーストーンを出して汁気を拭き、4つの小さな布袋にそれぞれ1つずつ入れる。
「成功、したわよね?」
エレナが掛けたのは、直ぐに会えない人に、夢で会える魔法。
但し会える回数は2、3度程度で、魔法を掛けた物を持つ者同士だけだ。
此れが、今のエレナに出来る精一杯。
エレナは瞳を閉じて、祈りを捧げる。
この先の未来が、幸せであります様に。

「今度あたしが好きになるのは、どんな人かしら?」
エレナは回想を終えると、布袋を突付きながら呟いた。
「幸せに、なってみせる」
皆の為にも絶対に。
そしてきっと、皆と一緒に。
胸の内で呟いたのは、再度決意した、覚悟の言葉だった。

あとがき

小説に出て来たパワーストーンは、パワーストーン天然石の意味効果事典の効果を参考に選びました。
エレナにこんな宝石買うお金があるのか?とはつっこまないで下さいね?
それではさようなら。
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