今回の小説は原作の隙間の話で、タイトル上と最後の方は17話、間は14話位です。
「ねえねえロゼちゃん。こんなのはどう?」「エレナさんは、本当に好きな人と結ばれてね?」
「役目が終わるその時まで、守りきって見せるけどな」
それは、ロゼとルイが結ばれないと知った時。
「お前達には、何時も笑っていて欲しい」
それは、ライオネルの未来を知った時。
3人が言葉と共に浮かべた笑顔には、小さな諦めと、大きな覚悟と、微かな悲しみが宿っていた。
少し前までは、他に優先すべき事があった。
だから考えないでいられた。
だけど今はもう、考える余裕が出来てしまっている。
気にし過ぎてしまう事は、相手も望んでいないと判っている。
だけど、何かがしたいと思った。
あの3人の為に、ほんの少しでも、何かがしたかった。
それが只の自分勝手な自己満足でも、このままでは、直ぐにはあの3人の事を、何でもでもない様には見られない。
だから、探している。
一緒に居られる今だけじゃなく、離れてしまっても出来る事を。
何時までも沈み込んでいるなんて、自分らしくない。
だからと言って、このまま部屋に居ても、気が滅入るだけだ。
だったら町に出てみよう。
何かが見付かるかもしれないと言う期待と共に、エレナは1人町へと行った。
「恋愛成就、邪気退散、様々な効果のパワーストーンは如何ですか?」
幾つもの客寄せの言葉の1つが、何故かとても惹かれ、店へと入って行った。
「いらっしゃいませ」
「表で言っていた他は、どんな効果の物があるの?」
「これを見て下さい」
店主はエレナに何かの紙を渡す。
「それが此処で扱っている物の効果全部です」
エレナは紙の上から下まで視線を滑らすと、店主に紙を返し、注文を口にする。
買ったのは、ロゼにラァーバ、ルイにモスアゲート、ライオネルにユナカイト、自分にチャロアイトだった。
「そういえば、あれも必要ね」
帰る途中に花屋を見付け、財布を確認する。
「まだ大丈夫そうね」
花屋で買ったのは、ニゲラとラベンダーだった。
「あたしが呼ぶまで、部屋に1人にして」
エレナは帰るなりそう言うと、部屋に入って行った。
ニゲラとラベンダーから絞った汁を入れたコップにパワーストーンを入れ、魔方陣の中心に置く。
部屋の電気を消し、杖を構えて精神集中し、呪文を唱えると、部屋中を照らすほど光った。
光が消えたらコップからパワーストーンを出して汁気を拭き、4つの小さな布袋にそれぞれ1つずつ入れる。
「成功、したわよね?」
エレナが掛けたのは、直ぐに会えない人に、夢で会える魔法。
但し会える回数は2、3度程度で、魔法を掛けた物を持つ者同士だけだ。
此れが、今のエレナに出来る精一杯。
エレナは瞳を閉じて、祈りを捧げる。
この先の未来が、幸せであります様に。